· 

新年度

 新年度に入り、新しい生活が始まった方もいらっしゃるでしょう。私にとっては新年度だからといって特に大きな変化がないのがいつものことなのですが・・。この春はちょっと様子が違っています。

 

 ここ最近はありがたいことに、大学や大学院や学会関係の手話通訳の依頼を頂くことが増えてきました。関西=都会=手話通訳者いっぱい、というイメージを抱く方もあるかもしれませんが、そうではないのです💦 これらの高度な内容の通訳を担える人材は限られていて、私もまだまだ修行中の身ですが、実質いつも顔を合わせるメンバーは10人にも満たないくらい。

 そこでよく一緒になる手話通訳士の仲間2人と、今年初めに集まったところ、「関西でも学術にかかわる手話通訳者をもっと増やしたい・後進を育てたい」「勉強する場所がほしい」「4月から、事業者へも合理的配慮が義務付けられることになるから、大学での手話通訳のニーズもきっと増えるだろう。それに対応できる体制が必要なのでは」といった話になりました。これらを実現するにはどうすればよいか。そもそも何から始めればよいのか、何から始められるのかわからなかったので、「ひとまず、先生に相談してみよう!」と普段からお世話になっている大学の障害学生支援室の先生に連絡をとってみたのです。そうしたら「わが意を得たり!」と、「全面的に協力するので、進めましょう!」とのお返事がかえってきたのです。思わぬ強力な後押しが登場し、なかばつんのめる感じで(笑)、「関西学術手話通訳者」のネットワークを立ち上げていこうということに、相成りました。

 

 そして3月31日、発起人3人から声をかけさせてもらったメンバー10人が集まり、第1回顔合わせミーテイングを開きました。来年関西で大きな学術系の集まりがあり大量の手話通訳者が必要とされる見込みなので、当面はそこを目指して学習などをしていくこととなります。

 

 将来的にはこのネットワークを、次のような機能を持った、いわば「ワンストップ窓口」的なものにしていきたいと考えています。

・大学や大学院、学会、ろう者からの手話通訳の要請に応え、手話通訳者を派遣する

・合理的配慮に関する大学等からの相談に対応、必要に応じて専門家など外部人材を紹介・派遣する

・手話通訳者の現任研修を行い、担い手を増やしていく

 この「ワンストップ窓口」的なものが会社になるのか、NPO法人のような任意団体のようなものになるのか現時点ではわかりませんが、理想や希望をいうばかりでは何も変わりませんので、見切り発車的に動き始めることになりました。

 現状、ろう者が使える社会資源は圧倒的に少ないです。そのためにろう者が、聞こえていればしなくてもよい苦労をしたり悩んだりする、あるいは諦めてしまう、そういう状況はやっぱり宜しくありません。私は、聞こえる聞こえる・聞こえないに関係なく、人生の選択肢は同等に与えられるべきだと思っています。「等高線」はそのような思いから、「誰かがやらないなら、自分から始めればいいじゃん」と思って、手話によるガイド業を始めました。今回の学術の通訳も同じです。誰かがやってくれるのを待っていては、おそらく何も変わらないし、そうこうしているうちに自分の現役時代は終わってしまって、担い手がいなくなってしまう可能性もあります。そうなっては困ります。

 

 ろう者が、情報保障について煩わされることなく、純粋に学業や研究に打ち込める環境を作る、それが私たちの目標です。

 試行錯誤しながら、ベストな形を作っていけたらと思っています。

 これを読んで、「自分も学術手話通訳の一端を担いたい!」と思われた手話通訳者の方、「協力してもいいよ」と思われた、ろう研究者の方、お声かけくだされば嬉しいです。

 

コメントをお書きください

コメント: 1
  • #1

    辻井秀樹 (日曜日, 07 4月 2024 05:59)

    学術手話通訳者ってここまで手話通訳者のあり方が変わってきたことに感慨深いものあります
    しかしながら…合理的配慮の解釈違いで公的機関や行政の今まで配慮して派遣してもらえた手話通訳が不認可になってる問題も増えてきました。うーん。ろう者の立場としてはどっこいどっこいです(TдT)