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救急用品の大切さ

 9月に穂高岳方面へ登りに行った。予定を消化し上高地・横尾へ下っていると、後ろで「あ!」という声があがった。振り返ってみると、男性が足を滑らせたのか、座り込んでいる。同行者がおり、普通に会話していたので、彼らで対処できるかと思ったが念のため声をかけてみたら、助けが必要とのこと。そこで、私たちパーティ4人の救急セットを全て取り出し、応急手当をすることにした。

 捻挫と思われたので、足首固定。テーピングテープもあったが、New-HALE(ニューハレ)のテープも少しあったので、これと併用することにした。少し腫れがあったのでまず患部に湿布をはり、そのうえからテープを張って、巻いて足首固定。ストックも持っておられなかったので、私のストックを貸与。傷みはあるものの、なんとか歩けそうということになったので、私たちは先に下山させてもらった。

 行ったことのある人なら分かるが、涸沢から横尾に降りる道の上部は少し岩があって段差がでこぼこしているが、歩くのに難しい場所ではない。そんなところでも、怪我は容易に起こるのだと、思い知らされた。おそらく、岩の上に少し乗っていた砂で足を滑らせたのだろう。滑ったあとは尻もちをついただけで済んだが、これが場所が悪ければ、転滑落ということになるに違いない。

 後々分かったことだが、転倒した男性は無事に自力下山できたものの、結局骨折していて、手術・入院が必要になったそうだ。たかが転倒とあなどれないし、骨折かどうかは素人では判断が難しい。

 このとき使ったNew-HALEのテープは良く出来ている。あらかじめ、必要な形に成形されていて、張り方マニュアル通りにすれば、(見た目)、必要な処置を行うことができる。けが人が出た時、救護する側もパニックになっていることが多いので、そんなときでもやり方を丁寧に誘導してくれるこのテープの存在は、とても助かることだろう。

 ちなみに私が普段ガイドのときに持ち歩いている救急用品は次のようなものである。

  • マスク
  • 使い捨てゴム手袋
  • 三角巾
  • 薬(ロキソニンやコムレケア)
  • ひざサポートテープ
  • New-HALE 応急テープ
  • たたくと冷える冷却パック
  • ポイズンリムーバー
  • 絆創膏
  • ストッキング
  • 弾性包帯
  • 穴をあけたペットボトルキャップの蓋
  • 滅菌ガーゼ
  • 湿布
  • ヘモスタパッド
  • テーピングテープ(38㎜)
  • 靴ひも予備
  • 結束バンド
  • 爪切り
  • はさみ
  • 裁縫セット

 これで最低限のものだと思っているが(本当は、サムスプリントも入れたほうが良いかもしれない)、まぁまぁな量と重さになる。しかし、理想を言えば、各自がこの一式を持ち歩いたほうが良い。そうでないなら、せめて、パーティに1つ、リーダーが持ち歩くようにしてほしい。そしてストックも。

 山での怪我・事故は意外と身近なところで起こるものである。

 救急用品の携行とあわせて、応急処置の技術も普段から練習しておきたい。