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手話通訳について その7:議会通訳

 今頃と言えば、議会で諸予算や来年度の計画等方針が決定される時期です。

 

 私が登録手話通訳者として活動している奈良県では、県の手話言語条例制定に伴い、議会期間中の本会議の部分を、手話通訳でリアルタイム配信&インターネット配信することが決まりました。また、奈良県の意思疎通支援者制度を利用している天理市の議会でも配信があります。私はそのどちらの通訳も担っています。

 同じ議会配信と言っても、収録方法や収録状況が違います。

 県議会のほうは、テレビ局の方が収録してくださいます。カメラマンは専属の方です。天理市の場合は、通訳を実施する図書室に小型のカメラとモニターが設置されてあり、通訳者自身がカメラや照明のスイッチを入れて収録をします。

 場所はどちらも図書室ですが、県議会は議会の図書室の一部を間借りしている形で収録スペースを使っているので、図書室に務める職員さんの業務や、図書室を利用される方々にお邪魔している形になっています。天理市も同じ図書室ですが、こちらは手話通訳者しかいません。今日届いた「日聴紙」では、岐阜県議会が、議会棟を立て替えたことにより、手話通訳専用室を作ったようです。羨ましいです。

(参考;https://www3.nhk.or.jp/lnews/gifu/20230222/3080010781.html

 

 県議会では1日のうち前半と後半担当の通訳者にわけ、前半組は、議会が始まる2時間前に議会棟に向かい、当日頂ける知事等理事者側の答弁書を受け取ります。2時間の間に原稿を読み込んで手話表現を考えるわけです。こちらの通訳は、議員さんの質問の前半あるいは後半をどの順番で通訳するかの担当があらかじめ決められているので、比較的ねらいを絞った事前準備ができます。天理市議会もそのような感じです。

 先日たまたま京都市議会も同じ時間でしていたので少し見ていたのですが、少し方法が違いました。ただしくは分かりませんが、一議員の質問に対して回答者が数名。それを4人くらいの通訳者で交代しながら通訳していました。あれは、準備が大変そうだなと思いました。ちなみに京都市議会は昔から、椅子に座って通訳するスタイルです。奈良では全て立ってやります。

 

 議会通訳をしていて思うのは、最近カタカナの施策が多いなぁということです。「DX」←※デラックスではありません。

「スマートシティ」

「ガストロノミーツーリズム」

「ラヒホイタヤ」

「フォレストアカデミー」

「クロスセクター効果」

「リダンダンシー」

意味がイメージできますか?

まさか指文字ばかりでは追いついていけませんし、意味も分かりませんから、議会だけの何か表現を考えなければならず、毎回頭を悩ませています。そのたびに、「高齢社会といってるのに、なんだかな・・」と思わずにはいられません。

 

あと、奈良ならではの表現で手話化に困るものも、多々あります。一番の悩みどころは「まほろば」。県外の方は、まぁ使われることはないと思いますが、「奈良」といえばもうセットというくらいの頻度で「まほろば」が使われます。「まほろばキッチン」とかイベントや場所の名前にもつきます。手話表現は仮決定していますが、まだ悩み中です。それ以外に難しいのが、奈良時代等の歴史関係の言葉。今は「飛鳥・藤原旧都遺産群」でしたか、世界遺産登録目指しているので、その話題もたびたび登場します。奈良独特だなぁと思います。

 

 議会は文字通訳もテロップも出ませんから、手話だけでしか情報を得られない人のことを第一に考えて意味の伝わる表現を考えますが、話し手の話すスピードが速すぎて、考えた手話を表現できないことが多々あります。

 

 手話通訳の有無に関係なく、県民・市民が聞いていてわかる話になるよう、話し方、言葉遣い、話すスピードに気を付けてほしいな、と毎回思います。

 

 他の議会の通訳は、どんな状況なのでしょうか。

 良ければ教えてください。