何のため？誰のため？

　山に登る皆さんは、いったい何のために登っていますか？　

　「健康のため」「日本百名山を制覇するため」「ストレス解消のため」「自分の力を試すため」・・いろいろありますね。では、誰のために登っているでしょうか。

　「そんなの、自分のために決まってる！」

　そんな答えが返ってきそうですね。あるいは、「亡くなった大好きな父のため」そんな答えもあるかもしれないですね。

　では、その「自分のため」を、もう少し深く見つめてみてください。それって、「誰かに自慢したい」「誰かに勝ちたい」「他人からベテランと見られたい」「あの人凄い！って言われたい」「SNSで、たくさんのいいネを貰いたい」そんなことではないですか？

　 もちろん、いろんな考えがあって良いと思いますし、何が間違っていて、何が正しいということもないと思います。ただ、先ほど挙げたような「自己顕示欲」のために山に登っている人って、ちょっと「要注意」だと私は思っています。

　つまり、自己顕示欲で登っている人は、自身の実力に見合わない山に、そうだと気付かずに行ってしまい、事故を起こしやすいように感じています。皆さんの記憶に新しいところで言えば、雪の富士山に自撮りしながら登っていて滑落された方がありましたよね。ああいうことです。自分を実際以上に良く見せて、他人から評価されたいと思うのですから、危険なところに足をつっこむ可能性が、必然と出てきますよね。

　大変残念なことに、山では「良く見せる」ことはできないのです。山は正直です。登っている人の実力、素質、性格、それらが素直に投影されます。無理な背伸びをしたら、足を滑らせて痛い目に遭います。そういうものです。

　自身の登山に「自己顕示欲」のために、という要素が少しでもある方。それがダメだとは言いません。ただ、少し慎重に行動しましょう。決して調子に乗って「ノリで」軽はずみなことをすることのないように。事が起きてから後悔しても遅いのです。

　かくいう私も、「かっこよく見られたい」という側面がないとは言いません。なので、調子に乗っているな、と気づいたら、自分自身に「気をつけろ。調子に乗ってるぞ」と言い聞かせています。他人の忠告を聞き、気を引き締めなおします。

　皆さんはどうですか？

　改めて問います。

　皆さんは誰のために、何のために山を登っていますか？