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あたたかい心

 私が登山ガイドの仕事で参加できなかった手話通訳に関する研修の様子を通訳仲間から聞かせてもらっていたときのこと。

 その仲間が「今後自分が目指す境地はこれ」と言った話が、とても心に残った。

 研修はオンラインで行われ、内容は講義と実技の講評の2本立て。その実技の通訳をしていた通訳者を見ていて仲間は、「心があたたかくなった」という。講評を受ける参加者はみんな緊張していて手話もぎこちないところがあったそう。技術的には「抜群にうまい!」わけではなかったけれどでも「相手(ろう者)に伝えたい」という気持ちがひしひし伝わってきたということだった。

  それを聞いて、手話通訳士になってほぼ20年になる自分も、「伝えたい」というコミュニケーションの基本を忘れていないだろうかと自己を振り返らずにはいられなかった。そもそも自分はどうして手話通訳士になりたいと思ったんだろうか、手話通訳士になってから目指していた通訳像はどんなだったろうか、そのことを今も忘れていないだろうか、目指す通訳像はぼやけていないだろうかー。仲間の話を聞きながらそんなことをぐるぐると考えていた。

 さらに続けて仲間はこう話してくれた。「通訳は、その通訳者の生き方やこれまでの人生が反映されるのよ、それは丸裸にされているも同然。だから恥ずかしくないように自分を磨いていかなければいけないのよ」と。

 これから、技術的にはもう急進歩することはないと思う。むしろ安定か、油断すれば低下の方向に向かうと思う。技術的な努力が必要なのはもちろんだが、これから加えて大事なことは心を磨くこと。通訳を見ている人が「あたたかい気持ち」になれるような通訳を心がけていかなければならないし、また、自身が豊かになるような生き方をしていかなければと、その話を聞いて心を新たにした。

 

 これは何も通訳の仕事に限った話ではない。登山ガイドの仕事にだって言えること。そもそもどうしてガイドになりたいって思ったんだっけ。そのことを思い出させてくれる機会にもなった。

 

 そんなこんなをブログに書こうと思って、「あたたかい心」で画像検索して出てきたのが、冒頭に出ている、ハートを手で包み込むように持っている絵。これって、「等高線」のロゴマーク(下の絵)ととっても似ていてびっくりした。 

そうか、私、ちゃんと「あたたかい心」をイメージしてたんだ。「等高線」を立ち上げようと思ったときに考えたこと、常々意識してガイドの仕事をしていこう。

 

「初心忘れるべからず」。当たり前だけど、忘れがちなこと。気づかせてくれた仲間に感謝。